第19章 十九朝
「医療班ッ!!」
ナルトが叫んだ。ぐったりとナルトに体を預けたネジの口から鮮血が垂れる。鎖羅はハシバミについた医療忍者を向かわせようと煽ぐが、彼は目を伏せて首を横に振った。
「ッ……クソ、瞼と眼球を持ってかれた」
鎖羅に降りかかった木遁は運良く鎖羅を押し退けたハシバミには刺さらず、しかし顔面を擦った拍子に、鱗が立った樹皮に目元が削り取られてしまった。
「そんな、目が!」
「問題ない。皮肉じゃないが、俺は感知タイプだ」
外套の裾を破いて、包帯の上から巻き付ける。
ナルトはネジの額の紋が消えていることに気づく。絹のような髪から痛々しく生え出た枝が突っかからないよう、そっと地面にネジを寝かせた。
そんな彼らをオビトは十尾の上から見下ろす。もはや動いている忍の方が少ないように見える。絨毯のように広がった亡骸たちは皆一様に樹木の養分になっていた。
鎖羅は一瞬、オビトが自分を見やったような気がした。
「さあ……当たりを見て、もう一度、“仲間は絶対殺させやしない”と言ってみろ」
「っ!!」
鎖羅は自分の裾を掴みながら硬直した冷たい仲間の手を掴む。救いを求めたその指は布を引き裂いて、死してなお離そうとしなかった。
「……冷たくなっていく仲間に触れながら実感しろ……死を!!」
青白い手から、内臓を着飾った枝、そして、自分の背後を見渡した。皆全員が、鎖羅の仲間。鎖羅の言葉に従って、鎖羅を信じて平和を追い求めた者たち。
その全員が、地に伏していた。
「……鎖羅、耳を貸すな」
チャクラが不安定になるのを感じ取り、ハシバミは震える鎖羅の肩を抱えた。
胸の中心のところが締め付けられて、消えて無くなってしまいそうだ。いや、消えて無くなってほしい。
戦争で人が死ぬことなんて分かっていて、仲間を導くことの責任だって心得ていたはずなのに、こうしていざ亡骸を前にした鎖羅の心の中は、戦死を遂げた勇敢な忍達に対する敬意よりも罪悪感と不甲斐なさが支配していた。
そんな自分が恥ずかしくて、今すぐにでも消えて欲しかった。