第19章 十九朝
十尾は尾をそれぞれ逆立たせる。手形をした先の方は指を曲げて僅かに震えると、掌から木の槍を連合へ雨のように降り注がせた。
術の発動が遅れるなど、一瞬の隙を見せた忍達に木の槍が杭打ちされた。
「土遁は人数を集めて壁を!!」
鎖羅は降り注ぐ槍の中、その隙間を縫いながら移動して連隊へ指示を出す。しかし、それに遅れたもの、怯え逃げ惑う者は次々に地面に磔られていった。
鎖羅の隣にいた忍が、突如視界から姿を消す。ビシャッ、と右半身に生暖かいものが降りかかったと思えば、杭を打つだけだと思っていた槍は、突き刺した体の中で枝を伸ばした。
「…………」
忍は痙攣して絶命した。
まるで体内から発芽したかのように伸びた枝の先は血に染まり、内臓が引っかかっている。
鎖羅は右頬の血を拭って、辺りを見渡した。
自分が呆然として、“死”のリアルさを感じている間にも、次々と仲間は死んでいく。
「……たすけて」
「いやだァ!死にたくない!!」
「逃げるな!覚悟しただろう!」
「なんでよォ!!」
ダメだやめて痛い苦しい怖い逃げたいお母さんどうして私が娘が待ってる神様助けてごめんなさいこんなところで医療班まだなのか明日なんてないナルトを守れこんなことならいっそ生まれて来なければ俺達なんてどうせなんでこんなこと
絶命していく忍達の最後の叫びがいとも容易く消費されていく。雑音としてこの戦場に消えていく。
────なにか、なにか指示を出さないと。私が守らないと。
踏み出した足は驚く程に震えていた。
くんっ、と裾を引かれ、後ろを振り向く。
「……リ……ダー……」
最後の力を振り絞って頼ろうと腕を伸ばしたその体から枝が広がった。鎖羅の全身は血飛沫を被る。
「鎖羅ッ!!」
「え─────────」
胸に強い衝撃を受けた。
ビュンと風を切る音。
鎖羅を押し退けたのはハシバミだった。
うずくまって顔を覆ったその手のひらからボタボタと滝のように血が流れだした。