第19章 十九朝
ピクピクと身体を震わせ、体に乗ったセメントを振り落としながら十尾は濃紺の空にその体躯を突き上げた。その動きだけでも大地が揺れ、忍達は盛り上がった地面の隙間や斜面に横たわって怪我をかばいながら唖然と見上げる。
「鎖羅ッ!」
地面に叩きつけられた鎖羅にハシバミは駆け寄る。医療班が呼び掛けに応じて全員の傷を癒した。
『グオオオオッッ!!』
立ち上がった十尾が大きな咆哮を轟かせたかと思えば、開かれた口めがけてエネルギーが次々に集まり、円錐の形をとる。
「土遁で足場を上へ!」
カカシのその声に岩隠れの黄ツチは手のひらを叩きつけると、十尾の足下の地盤が昇降台のように突き出した。その攻撃にバランスを崩した十尾が発射した尾獣玉は、はるか遠くへと風を切って目測でも測りきれないほどに高い爆発をあげる。
「……!」
「……ハシバミさん?」
数発ほど発射された中のひとつにハシバミは反応する。嫌な予感。感知できる範囲にも制限があるが、この方向は間違いなく多数の忍、それも司令塔が集まる場所。
────『皆、聞いてくれ。』
「……えっ」
フッ、と小さな爆発音がした。
それと同時に本部からの伝令が途絶えた。
「これって……どういうことだってばよ?!」
「お前が作戦の鍵ってことだ」
「違げえよ!シカクといのいちのおっちゃんはどうなったって聞いてんだ!!」
間違いなく、死んだ。
「えげつねえやり方するぜ!うん!」
デイダラとサソリは鳥から降り、鎖羅とハシバミ、そして暁が集まっている場所へと合流する。
「戦争において多数の連隊を持つ指令本部が潰えてしまえば、もはや勝ち負けは決まったものだ」
「ええ。でも私たちはまだ負けていない。」
鎖羅はペインと小南の言葉を聞き、シカクから最後に託された作戦をもう一度思い出した。日向ネジの言葉通り、ナルトが鍵になる。ナルトの九尾の力がまた十分に戻るまで、私たちは十尾を止める。
「ハシバミさん、みんなに指示を。……リーダー、私は自分の連隊の方で動きます。」
「ああ。俺達が優先すべきなのはナルトを守ること……だが鎖羅個人が優先すべきなのは、自分の組織を導くことだ。……リーダーとしてな。」
「…ッ、はい!」