第19章 十九朝
「取り上げました、当主様、お孫様です……!」
手のひらにも満たないほど小さいその赤子を、最後に残された左目で見つめる。涙が零れた拍子に、眼球が弾け粉となった。
「内臓……私の内臓だけは残るわ、その子を包んで容器に一緒に入れてください。」
涙を流しながら医療忍術は強く頷いた。
そして、当主と里長は互いに肩を預け合う。
「鎖羅……愛してる」
「結界が……」
一段と光を放って、ボロボロと崩れた。
すっかり顔色が良くなった鎖羅は灰に包まれるようにして眠っている。傷口を閉じて処置を施し、医療忍者は赤い塊を拾い上げてまとめると、簡易的な手術器具に含まれていた小さなガラス瓶の中に詰め込んだ。
「鎖羅、鎖羅」
ハシバミが鎖羅の肩を揺すると、唸りながら鎖羅は起き上がった。
「ああ、良かった。鎖羅、大丈夫か?」
「私………何を」
「……傷口の処理が終わったんだ。身体は平気か?」
ハシバミは子供のことを伝えようとして一瞬、口を噤んだ。それはかつて自分が犯した罪。子供は誰の子か分からないのだ。
「ええ、痛みも全く無いです。……これは?」
鎖羅は自分の体を纏っていた灰をすくい上げる。流水のようになめらかにこぼれ落ちていくそれは、大事なもののように思えて不思議でない。
同時に、その場にいる全員、誰もが“それ”が何であったのかが分からなくなっていた。
「ッ!このチャクラ棒……リーダーが?」
「ああ、そうだ。」
前腕に突き刺さったチャクラ棒が、メンバーのチャクラに呼応して絶えず彼らの状態を伝え続ける。