第19章 十九朝
「最後を共にできて、光栄です。どうか責任など感じないように……」
かざした手に力が篭もる。
その時、四人に鎖羅の記憶が流れ込んできた。
「私たちのチャクラと鎖羅様の体が融合し始めてる……」
四人の脳内には紫色の装束を身にまとった男が絶えず映し出されている。スメラギはその男の顔面の傷に見覚えがあった。そして全てを思い出した時、その男は語った。
“先鋭部隊なんぞ名ばかりで、全員を写輪眼で操ることなど容易いものだったな。……そうだ、確かお前の父は里長のハズだ。最後の言葉、聞きたいか?”
「……スメラギ、疑って悪かった」
「ウズメ……。」
「スメラギ、気に病むなよ。お前のせいじゃない。元凶はこの男なんだ。そして鎖羅はこれからそいつと対峙する。お前ができることは、その全てを鎖羅に託すこと。」
「里長様……ありがとうございます」
医療忍者は内臓を固定し終わり、血を掻き分けて鎖羅の子宮へと到達した。鎖羅は送られてくるチャクラをより一層吸い取る。その威力に負けないよう、4人は全力を尽くしてチャクラを送り続ける。
そして蒸発と共に次第に体が崩れ始めた。体こそ穢土転生でも、生きたまま肉体が灰になる恐怖に少しでも気を緩めれば負けてしまいそうだ。
「……スメラギへの疑いも晴れて、私達も鎖羅も、一族の呪いから開放される」
当主の右眼が塵のように溢れ出す。その粉体は眼窩にも及んでいった。
「鎖羅様、私がもつ全てを貴女に授けます。どうか、どうか、皆の仇討ちを………」
それがスメラギの最後の言葉だった。
「鎖羅様……。私は当主様の御子であるあなたの教育者になれて幸せでした……。天からもずっとあなたのことを見守っています。それでは……」
ウズメの体が完全に灰となり、鎖羅の腕に被さった。
「……怖くないかい?」
「ええ、怖くないわ。私たちが信じた子ですもの、必ずやり遂げられます。」
里長が当主の手を掴んだ。ひび割れたお互いの手が灰になって混ざり合う。