第19章 十九朝
駆けて行った暁の背中を見送り、ハシバミは一息つく。
「皆……心して聞いてくれ。鎖羅のチャクラは本来はふたつある。鎖羅の母由来のものと、本人由来のものだ。」
治療を施しながら、残った女性の医療忍者が緊張した面持ちで生唾を飲み込んだ。
「今、それ以外にもうひとつのチャクラを感じる。間違いなく鎖羅の体内にあるものだ。」
「そ、それって……!」
「母体は今危険な状態……緊急事態だ。帝王切開で直ぐに腹から取り上げる。」
「でも!今ここには十分な器具もありません!それに……子供を守るものだって……!」
「……鎖羅?」
ぶわりと白檀が薫る。
鎖羅の母、そしてスメラギとウズメと父が戦場に到着した。しかし、目に入ったのは我が子の変わり果てた姿だった。
「アンタは……」
薄汚れた装束の裾をはねのけ、鎖羅の頬に手を当てた。ひやり、と指先が冷たくなる。そして当主は苦悶の表情を浮かべ、後ろにいる3人を呼び寄せた。
「1人……ひとりだけ、子の取り上げをお願いします。ハシバミさん、私たちに任せて貰えませんでしょうか。」
「構わねぇ、鎖羅が救えるなら」
掴んでいたネックレスを首に着け、1人の医療忍者を鎖羅につかせた。
ハシバミとその他の忍者が離れたのを確認すると、当主は印を結んだ。小さな衝撃波の後、当主を中心に結界が広がって鎖羅、そして当主達五人を包み込む。