第19章 十九朝
「すみません、遅れました!」
しばらくして到着した医療班が、角都とサソリに変わって鎖羅に医療忍術を施す。しかし、傷が治るどころか医療忍術は出血に追いつかずみるみるうちに鎖羅は青ざめていった。
「おい、鎖羅は─────」
「ハシバミさん!」
「……連合の医療班じゃないのか?」
「ええ。鎖羅の部隊よ。」
次いで駆けつけた男を見て、角都は到着した小南に問いかけた。ハシバミと呼ばれた男は引き連れてきた忍者達に戦場に向かうよう指示すると、跪いて首にかけたネックレスを外す。
「……!!」
「……副隊長?」
「医療班、女だけここに残れ!男は全員連合軍の手当に至急向かえ!」
その瞬間、前線が光る。
大きな爆発と共に、漆黒の空に触手のようなものが蠢いた。
「あれは─────」
ギキイィイイィィイイ!!!!!!!!
鼓膜を劈くような金切り声に全員耳を塞いだ。
遠くから見ても巨大な尾をうねらせているそれを見てペインは十尾だ、と呟いた。
「十……十尾?!」
「外道魔像の真の姿……月の眼計画が本格的に始動している」
ペインはメンバーに振り向いて、腕を差し出す様に言う。言われるがままにすると手のひらから生えたチャクラ棒がそれぞれの前腕に突き刺さった。
「ハシバミ、だったな。」
「あ、ああ……」
ぐったりとした鎖羅の腕を持ち上げ、同じようにチャクラ棒を通す。
「鎖羅の治療を頼んだ。俺たちは戦場へ行く。」
傭兵時代、はるか雲の上の存在であったペインを前にしてハシバミは僅かに高揚する。その藤色の輪廻眼に強い瞳力に、決意を込めて頷いた。