第19章 十九朝
「……………」
鎌で引っかかれたような傷跡から肉組織が見える。しかし、血が垂れるか垂れないかのところで、傷跡は煙をあげて塞がっていった。
頭を振り切ったまま動かないオビトに、鎖羅は動向を窺っている。
「……ッ、ハハ」
乾いた笑い声は、かつての彼の朗らかさなど微塵も感じさせない。
本当に、本当に………?
「どうして、何も……言ってくれなかったんですか」
鎖羅の武器を構えていた両腕が力なく垂れ下がる。悲痛に歪むその表情とは裏腹に、オビトの目は爛々としている。
「ハナからこの計画の中にお前の名前などない。オレが求めていたのはお前の一族の禁術……ただそれだけだった。」
「……じゃあ、全部、今まで」
「カブトが禁術の解析に成功した時から、お前は既に用無しだったのさ。偽りの愛はお前を戦場に駆り出してしまうほどに甘美なものだったか?」
「オビト、お前……ッ!」
「リンよりも弱く愚かなお前は、夢の世界で愛を享受する資格すら無い。現実に縛られたまま死ね。」
オビトは地に足を付けたまま時空間忍術で鎖羅の目の前まで迫る。生気を失い、地面にへたりこんだ鎖羅の首を掴み宙に掲げた。抵抗する素振りも見せず、唾液を喉に詰まらせる音だけが鎖羅の口から発せられる。
オビトは突然、右側方からの殺気を感じて鎖羅の首から手を離した。
立っていた場所が、ナルトの螺旋丸によって抉り取られたようにへこんでいる。すり抜けたオビトは傷一つなく後方へ退いた。
支えを無くした鎖羅の身体をナルトは受け止める。