第19章 十九朝
「オレを責めないのか……?」
「こんなくだらない現実を今更責めて何になる?これから消える世界のことなどに、興味はない……」
オビトは言い終わるかどうかの時、右足を踏み込んだ。
鎖羅はオビトが振るった団扇を肩口に受ける。転身して太刀筋から抜けるも、オビトは反撃を許さないと言わんばかりに手裏剣を右目から吐き出しながら鎖羅を掴もうと手を伸ばす。
「また逃げるか?一度はオレの手中に収まっただろう?」
「っ……」
二人の間を九尾チャクラが隔てた。そのまま方向を変えてオビトを捉えようとうねる。
「鎖羅、どうしてオビトはお前を……」
「……私の、血が目的だと思います」
鎖羅は身体をくるりと回転させて退いた勢いを殺す。そして外套をはたいて武器を腰から引き抜いた。
「火遁……爆風乱舞!!」
鎖羅はリュックから取り出した水筒の中身を周囲にばらまく。そして足の裏にチャクラを集中させた。螺旋を描く火の中に飛び込もうと上体を倒せば、湧き出た水が身体を持ち上げて地面との抵抗を最小限に減らした。
鎖羅はまるで波に乗っているようなスピードで進む。はためいた外套の裾が炎に焼かれる。熱風に耐えながらも、鎖羅の瞳はオビトを捉えていた。
跳躍し、武器を握った左手がオビトの顔に振り下ろされた。迷いを僅かに含んでいたのをすかさず察知したオビトはそれを右腕で容易く防ぐ。
「!……泣いているのか、鎖羅」
落ち着いた口調とは裏腹に、オビトは目をギラつかせながら笑みを浮かべていた。
鎖羅の目尻から零れ落ちたいくつもの玉のような涙が、体が落ちるのに反してふわりと浮かぶ。オビトが防いだ鎖羅の左手を掴むと、浮遊した涙は左右に引き伸ばされて針のように形を変えた。
鋭い針先はオビトに向けられる。
顔を思い切り右に振り切って避けようとするが、一本頬を掠める。
オビトの手が緩んだ隙に、鎖羅は抜け出して後方に飛び退いた。