• テキストサイズ

邯鄲の夢【NARUTO】

第1章 薄暮




本殿へ吹き込む風と、神社を含む私たちの住居を中心に四方へ伸びる川の冷気が髪を梳いていく。


勾配のきつい石階段を勢いよく駆け下りて市街地へ入ると、朝の散歩や祈祷をしに行く人、店の準備をしている人達で街が目覚めていっていた。

「おはようございます、鎖羅様」
「おはよう鎖羅ちゃん!今日も元気だな!」
「あっ、鎖羅ねーちゃんだ!」

通り過ぎる人々に挨拶を返し、出入門へと向かっていく。足にチャクラを集中させ、門の最上部へと飛び登る。

白の漆喰と瑠璃の顔料で模様が付けられた法則的な建物が並ぶ私たちの里、“夢見の里”は火の国を出た端の端の端、海に面した最東端に位置する。海岸へ行けば直ぐに霧隠れの里が見えるほど端っこだ。
そして里の中心、私の家であり民たちの心の拠り所である神社は高い丘の頂上に位置し、そこから里の東西南北へと川が流れている。

「っ、よっと」

里を見下ろすように仙人座りになり、目を閉じる。水面にチャクラを静かに滴下していくように感覚を研ぎ澄ます。開花のおかげか、いつもより上手くいっている。

初めてから数分後、また一滴が落ちる。その瞬間脳が覚醒した感覚を味わう。
ゆっくりと目を開ければ、眼前には白い霧が広がってまるで空間が裂けたように幾つものぼんやりとしたビジョンが映し出されていた。

一族の血を受け継ぎ、かつ当主としての素質がある者のみにできるこの術は、予知夢に長けた夢見の里の民全員の夢の内容を見ることが出来る。といっても毎日全てがそうという訳では無いし、まだ未熟な私は見れても数十人が限界だ。

目を閉じるとどっと疲労が襲いかかる。この術も母ほどには上手くないので、まだまだ継ぐには早すぎると実感した。


「鎖羅、頑張ってるな」

「お父さん!」

息を整え、これから任務に向かう父の元へ降りる。ぽんぽんと頭を撫でる手はとても大きい。

「御息女さま、おはようございます」

「おはようスメラギ!」

里の長である父の側近のスメラギが深々と頭を下げる。荷物からしてそれほど遠い遠征任務ではないようだ。

/ 389ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp