第17章 十七朝
「操られていたと言えど、私たちが皆様にとって大切な方々を殺めてしまったのは事実……。謝罪の言葉だけでは足りませんとは思いますが、当主である私のみの責任でご勘弁頂けますよう……」
もう一度、頭を伏せる。
間髪入れずに、群衆の中から1人の構成員が声を上げた。
「……当主よ、あなた方は永世中立里だった故に戦争は知らないかもしれない。だけど、俺たちは何かを失うことを覚悟してここに来ている。」
次いで、女性の構成員も声を上げる。
「どうか気に病まないで欲しい。そして、あなた達が平和のために戦ってくれるのなら、私たちはそれを償いとしよう。」
当主はゆっくりと顔を上げた。
構成員や忍達は、強く希望を持った眼差しで見つめていた。
「……おかあさん」
鎖羅は膝をつき、母と目を合わせる。
鎖羅の顔立ちは大人らしくなっていた。何かを失う戦いを知っていた。あの忍達と同じような、強い眼差しを持っていた。
もう、私の娘は子供じゃない。
いったいここまで成長するのに、どれほどの努力があったのだろうか。どれほどの挫折に打ちひしがれたのだろうか。どれほどの大切なものを、失ったのだろうか。
私の心の中の「里」は未だ燃えている。
だけど、鎖羅は灰を握りしめて立ち上がっていた。
「私たちと一緒に戦おう。」
橙色の夕日が砂浜を照らす。
鎖羅の温かい手が肩に置かれた。
とても力強い、忍の手。
当主は息をつまらせ、ボロボロと目から涙を落とす。
「ありがとう、ありがとう…!」