第17章 十七朝
嗚咽とともにナルトの口から這い出た烏は、イタチとは異なる柄の万華鏡写輪眼を目に携えていた。
「な……なんでオレの口からカラスが出てくるんだよォ……ゲホッ、ゲホッ!」
翼をはためかせた烏の万華鏡写輪眼は、イタチにギョロリと目を向ける。
ジワリと目尻に血が滲んだ。
「!!」
ナルトはサスケを追う途中にイタチと遭遇し、見せられた幻術を思い出した。本当に腹の中にカラスを仕込まれたことに驚きつつも、口を拭う。
(ビー!アイツの様子がおかしい!)
「わかってるぜ八っつぁん!」
手裏剣を弾き、地に突き刺さったままの短刀の一つを抜き取り、イタチ目掛けてぶん投げる。
鋭い切っ先がイタチの腕を切る。グパリと開いた傷口からは血は一滴も垂れず、塵芥が集まり再生してしまう。
……
「!!?」
感じ取った異変に、隠れ場所のカブトは大きく体を揺らす。
「何だ?!」
イタチが感知できない。
「……どういう、事だ……?」
………
万華鏡写輪眼の烏はナルトの肩に降り立つ。
そして、何かを待つように首を伸ばし胸を張った。
「……天照!!」
黒い炎が烏を襲った。
ギィギィと耳障りな断末魔を上げ、ボトリと落ちる。
(シスイ………)
「……ど、どうなったんだってばよ……?」
イタチはゆっくりと体を起こす。
その動きにナルトとビーは迎撃の体勢をとった。
「落ち着け……もうオレは操られてはいない。この敵の術の上に新たな幻術をかけた。“木の葉の里を守れ”という幻術だ。」
黒く焦げた烏はピクリとも動かない。
「……そのカラスは、オレの万華鏡写輪眼に呼応して出てくるように細工しておいたものだ。」
イタチの両目が写輪眼に戻る。
「どういう事だ?」
「うちはシスイ、万華鏡写輪眼。“別天神”……。左目に仕込んだ瞳術の名だ。この動力は幻術にかけた事を悟らせる事無く、操る事ができる最強の幻術を生む。」
「……なんでその眼を、アンタが持ってオレなんかに渡したんだ?」
「あの日……蘇生したオレはサスケと初めて腹を割って話すことが出来た。すれ違い続けたお互いの人生を……やっと交わらせることが出来たのだ。」
語り口とは違い、イタチの表情は僅かに陰った。