第17章 十七朝
「………お母さん?」
目が覚めた。
声がした方向に目をやると、一人の少女が所々薄汚れた風貌で立ち尽くしている。
砂浜は、血を流して倒れた忍、溶けたように分断された白い体で埋め尽くされていた。
手が血に染っているのに気付く。
自分がしていたことは、一体。
「鎖羅……逃げて」
「いや、いやぁッ!!」
走り続けてまるで水を貯めた袋のように重く感じる足が徐々に冷たくなっていく。
黒ずんだ瞳が鎖羅の身体を哀しく見つめていた。母の白い肌は血で赤い。見たことがない。こんな姿、今まで一度も。
鎖羅は母の水遁で足元を攫われると、空中へ放り出された。なにも分からないまま、砂浜に叩きつけられる。
(死体が……?でも、知ってる人なんて居ない……!!)
先程のデイダラの言葉が鎖羅の脳内で再生される。いま目の前で戦っている母の身体は、紛れもなく母のものなのだ。
「避けて!!」
「?!」
呆然と膝をつく鎖羅の頭めがけて、ウズメの脚が振り下ろされる。とっさに右腕で受け、ウズメの顔を覗き込んだ。
「ウ、ズメ……」
「申し訳ありません、ッ」
ぎゅっ、と目は固く結ばれていた。
体制を立て直し、握られた拳が飛んでくる。
それを受け流すように手のひらをウズメの手首に打ち付けた。しかし次々と拳は鎖羅の顔面めがけて突き出される。
鎖羅は反撃することも出来ない。