第17章 十七朝
「俺は…きっと安らかには死ねねぇ。でももし…!あの世でアイツに会えたとしたら…顔向けなんて到底出来ねぇんだ…!だから…!」
「ハシバミさん…顔をあげてください」
鎖羅は悲痛に歪んだハシバミの肩に手を当て、柔らかく微笑んだ。
「口では平気なことを言ってても、私は心の底ではあなた達のことを許せていないかもしれない。…私も人間ですから」
「ああ…わかってるさ」
「でも、あなたはきっと、罪の意識を忘れるなんてことはしない」
鎖羅はおもむろに立ち上がると、文机の引き出しから真っ赤な液体が入った、親指ほどの小さなボトルを取り出した。
それから、ハシバミのペンダントのチェーンを外しボトルの穴に通す。
「あなたに戦場に立つ目的があるなら、そして償いのために私に命を預けられるなら、それだけでもう仲間と呼ぶに相応しいと思いませんか?」
ハシバミは救いを得た喜びに顔を僅かにほころばせる。そして、ボトルを光に透かした。
「これは…?」
「私の血です。いまから伝える印を忘れないでください。もしあなたの身に危険が及んだ時、その血を飲んで印を結べば必ずや助けになります。」
鎖羅は以前トビが自分との粋筋を逆手にとり、解術ではあるが一回だけ能力を手にしていたのを忘れていなかった。寿命を消費するが故にそう何度も使わせる訳にはいかないが、血を交わした者同士の象徴としてハシバミへ渡したのだった。
行灯の炎も沈んでいく部屋の中、鎖羅とハシバミは静かに握手した。
互いの目的を、戦場で果たすことを誓って。