第14章 雷雨
「……戦場は、人が死んでばかりだ」
カカシは落ちた花を拾い上げる。
「鎖羅、気分転換に散歩に行こう」
鎖羅はゆっくりと顔を上げる。
カカシは涙に濡れた頬を拭ってやり、ベッドから降りるのを見守る。
できるだけ人通りの少ない道を選び、歩幅を合わせながら歩いていく。
時折つまづきそうになっても、手を貸さず、鎖羅が自力でこらえる度に歩みを止める。
「はいコレ、持って」
ベンチで待たされ、少しして帰ってきたカカシから二つの花束を渡される。
わたわたと両手に抱えて歩いていくと、ついたのはいくつもの石が並んだ広場だった。
そして、ひとつの石に着くと、カカシは足をとめた。鎖羅は静かに花束のひとつを供える。
「のはらリン?」
「…オレの昔の仲間だ。」
鎖羅の胸がチクリと傷んだ。
カカシさんも、仲間を亡くしていたんだ。
それなのに私、あんな子供っぽいことを…
カカシは数秒目を閉じ、またはたりと開くと、今度は広場を出てすぐ道を逸れたところの、先程より小さめな野原へ向かった。
「…二人も?」
「先生も亡くしてね。木の葉は上忍一人当たり三人の下忍をもつ三人組制度をとってるんだ」
「それじゃあ、カカシさんって」
「ハハ、同じだね」
ニコ、と笑っていても、心の奥底では常に無常観を抱えているのを感じた。
この人は、どれだけ我慢してきたのだろうか。どれだけ、死にたくなってきたのだろうか。