第14章 雷雨
「今日ここに来たのは、鎖羅に大事な話があるからだ」
「………」
鎖羅は患者衣の胸元をなおす。
「先程火影様から、鎖羅を本来の力以上まで戦えるよう、修行してやれとの要請があった。」
「?!な、なんで……?」
「……もうすぐ戦争が始まる。」
ドクン、と心臓が鳴いた。
戦争、嫌な言葉だ。
里同士の戦いが繰り広げられるとか、実際にそれらしい戦場に向かったことは無いが、かつての故郷の業火を思い出す。
…きっと、あれより酷いのだ。
「鎖羅には、木の葉陣営として戦力となってもらう。」
「……ごめんなさい、断らせてください。」
「……理由を聞こうか。」
カカシは立ち上がり、鎖羅に背を向け、窓の向こうを見つめる。
「もう、誰の前にも立ちたくないんです」
「…火影様がどう意図して戦力にしたがっているのかは分からない。だが、自分の故郷でもない木の葉隠れを命懸けで守ってくれたあの時を見て、きっと鎖羅はまた、同じようにして忍界を守ってくれる。そう思ったんじゃないかな。」
カカシは鎖羅の顔に振り向いた。
細くなった肩を震わせ、布団をぎゅっと握りながら目に涙を溜めてこちらを睨んでいる。
「私は……私は、民を守れず、家族を守れず、仲間さえ守れず、かわりにいつも守られてばっかで、そのくせに守りたいって言うばかりの口だけの忍者で……自分すら守れなかった!カカシさん、私にはもう何も出来ないんです…!もう二度と、守りたいだなんて、思いたくない……ッ!」
オーバーテーブルの上の花瓶が落ちた。
鎖羅は全て物を払い落とし、うずくまって泣いている。