第14章 雷雨
「…………おい」
「…………」
「オイカブトてめぇコラ!」
「ハァ……何だい?今僕はエンバーミングで忙しいんだ。」
訝しげに振り向いたカブトの手は、血まみれのゴム手袋がはめられている。
デイダラは血に怯えることも無く、ただ研究熱心なカブトに呆れるようにため息をついて両手両足を地面へ投げ出した。
「なんでオイラだけなんだよ。こんな退屈なら旦那達みてぇにボーッと突っ立ってる方が楽だぜ、うん」
「キミの術は移動手段として最適だからさ。」
「…オイラをナメてんのか」
「無駄な行為だ、やめたほうがいい」
そう諭され、デイダラは粘土のポーチに突っ込んだ手を引き抜いた。
その通り、無駄な行為だ。
自分一人だけ穢土転生体として意識を持たされている。しかも制限付き。カブトに歯向かおうとすると身体が固まって動かなくなる。
穴でも空いているのかと錯覚するほど真っ黒な瞳。地下アジトのカブトの研究室の隅に並んでいる穢土転生された暁メンバーは、デイダラと違って話すことも動くこともない。
目覚めてから幾度となく考えを巡らせているが、最終的に行き着くのは鎖羅のことだった。
あれからどのくらいの時間が経ったのだろう。もしかしたらもう死んでしまっているかもしれない。
届くことの無かった蝶をまた羽ばたかせるように、デイダラは真っ暗な天井に手をかざす。