第14章 雷雨
「そりゃそうだろうの、身体が今にも折れそうなほどやつれてる」
鎖羅は休憩室の中に置かれた禁煙スペースを区切るガラスに目を向ける。
そこにうつっている自分は、確かに弱々しい。
ついこの間まで戦えていたなんて言っても誰も信じないだろう。
「…リハビリもろくに続けられなくて、嫌なことばっか思い出しちゃって……私、もう忍には戻れないです」
ぽつりとそう呟き、俯いてしまった鎖羅。
自来也は少し物憂げな顔で鎖羅の顔を覗き込んだ。
「鎖羅、こっち向け」
「…?」
三白眼で爛々と光った黒目が鎖羅を射抜く。その眼力に圧倒された鎖羅は、この人は本当に強い忍だったんだと心のどこかで思う。
「……うん!」
「えっ、と」
「お前、まだ目の光は消えちゃいない」
ぽかんと不思議そうな鎖羅は立ち上がった自来也のことを見る。そして腕を組んで得意げに続けた。
「どんな壁にぶち当たっても、心の奥で信念の炎を燃やす忍は必ずその壁を乗り越えることが出来る。お前にとってはその怪我が気の遠くなるほど高い壁に感じるかもしれない。でも、最後まであきらめずに粘り強く登り続ければ、いつかは雲も掴めるってモンだのぉ!」
豪快に笑ったその表情は、いつかの金色の彼を彷彿とさせた。
何故だろう。自来也さんからはナルトくんのような温かさを感じる。
手をヒラヒラと振りながら、自来也さんは去っていった。
鎖羅は胸の奥がドクドクと高鳴っているのを感じた。