第14章 雷雨
「気分は、どうだ。鎖羅」
鼻全体をガーゼで覆い、頬は赤黒く腫れている。
全身もまるでミイラのように包帯にまみれていた。
起き上がることも出来ないため、鎖羅は右腕に打たれた点滴のチューブを僅かに揺らすことで看護師を呼んでいる。
「いたい、……」
「点滴が切れていたか、おい!解熱鎮痛剤を至急!」
「はい!」
綱手は椅子を引いて腰掛ける。
幾度となく戦場で同じくらいか、これより酷い忍を見てきた。
しかし、同じ女として、ましてや幾回りも年の離れた少女が大勢の忍に強姦された辛さを思うと、気にかけてやらずにはいられなかった。
点滴のパックを受け取り、空のパックと取り替える。腕の腫れを確認し、滴下量を僅かに上げた。
「あと二日ほどの辛抱だ。まだチャクラが安定しておらず体力も回復しきれてないから、医療忍術や手術を施すことができない。」
「……は、……ぃ」
今にも息絶えてしまいそうな表情に綱手は顔を歪ませる。
身体の怪我は医療忍術を施せれば直ぐに治るだろう。だが、彼女に残る精神的苦痛を取り除くのは一年、二年の話ではない。
「その……、妊娠の件なんだが、ひとまずは安心していい。もう恐れることは無いよ…」
「………ん……」
ゆっくりと目を閉じた。
そのまま寝息を立て始めたので綱手はほっ、と安心し、窓を閉めた。
病室を出て執務室へ向かう。
その間にも綱手の思考は滾滾としていた。
何者かに一夜にして暁が討たれ、尾獣も奪われた。
急に仕掛けられたこれらの動きに、戦乱を予感せずにはいられない。
火影としても様々な職務に追われ、一抹の不安を抱えながらも、綱手は鎖羅の治療を先決とした。