第13章 夕立
アジトの共有部屋へ足を踏み入れた瞬間、鎖羅は目の前の光景を疑った。
崩れ落ちた天井に、プスプスと焦げ未だ赤く熱を燻らせる木くず。あらゆる所に血飛沫が広がり、あの後の戦闘が如何に壮絶であったかを物語っていた。
だが、驚いたのはこれだけでは無い。
「……クク」
「な、ん、……で」
共有部屋の奥の影から、真一文字に傷つけられた額当てがキラリと怪しく光る。
次第にゾロゾロと人数は集まり、瞬く間にアジトは忍で埋め尽くされた。
どの面々もビンゴブックに名を連ね、暁より下の組織に属する者達だ。
彼らにとってこんな絶好のチャンスがあるだろうか。国家に正式に活動を認められた暁が今や弱い少女一人のみ。傭兵集団の頂点のイスは実質がら空き状態なのだ。
「ま、まずい……っ」
「逃がすな!」
よろよろと踵を返し階段の手すりから飛び降りようと上半身を乗り出すも、後ろから追ってきた大人数の敵に身体を抱き抱えられる。
「やめっ、やめろ!!」
必死に抵抗するが、既に満身創痍の身体では効果は無く、共有部屋に引き戻され床に投げつけられる。
血が床の板材に染み付き血溜まりとなっていた。ジリジリと距離を詰めてくる男達から少しでも逃げようと後ずさりするが、後ろは壁だった。