第13章 夕立
全身が痛い。地面に着いた頬が砂と擦れてじんじんと傷んでくる。
霞む視界の向こうで、トビの隣に黒い物体が降り立つのが見える。
「……ト、ビ………さ………」
力なく腕を上げるも、届かない。
鎖羅の体は崩れた地面の端からずり落ち、水面を破った。
「……!」
バシャン!と音がたち、トビは思わず後ろを振り向く。
屈折した水中の向こうに鎖羅が沈んでいくのが見える。
「……未練かい?」
「ハッ、馬鹿言え……」
フン、とカブトは鼻を鳴らした。垂れた袖の中から一匹の大蛇が静かに水中へ潜っていく。
「君にも情があるかと思ってたけど、そんなことはなかったみたいだね」
「生かしておいてやっただけ良いだろう」
「そういう話じゃなくてさ……ま、いいけど」
カブトとトビはひたすら歩いていく。
降り続いている雨は、20年以来の降水量最大を記録した。