第13章 夕立
デイダラは激痛を感じながらも、急に陰ったので僅かに顔を上げる。
見えたのは、黒く変色した目で見下ろす相棒、サソリ。
「は、っ、はぁ…ッ」
もう何も出来ない。諦めるなんてオイラらしくない。そう思っても、もう体は動かない。情けない。こんな最後だなんて認めたくない。
(せめて、鎖羅に、なにかを……)
震える手が数回握られると、力なく垂れ下がった舌から小さな蝶が吐き出された。
「遺、作か……は……はは……」
フラフラと飛んで行ったのを見送ると、デイダラはぐたりと頭を下げた。そしてもう二度と、動くことは無かった。
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鎖羅の血の気が一気に引く。
脳裏に浮かんだのはあの場を任せたメンバー達の顔。
もう…サソリさんとイタチさんは死んでしまっているかもしれない、いや、死んでいる。
「あの時センパイの血、頂いたんでね……あでも、もう術は使えないッスよ流石に」
「そ、んな……」
「ハハ。あのまま安らかに死なせておけばよかったものを。センパイが生き返らせちゃったせいでこうなったんすよ?」
トビは目を弧に歪ませ、鎖羅の髪を引っ掴んで瓦礫へと投げた。その拍子に小南から貰った髪飾りが水の上に飛んでいく。
「あ〜あ……小南さんもこんな弱い人の事守ろうとしちゃって」
鎖羅は立ち上がろうと腕を立てるが、全身に襲った痛みにまた崩れ落ちた。パシャパシャと水の跳ねる音がする。トビはもう既に、鎖羅から離れて歩き出していた。