第13章 夕立
「ッ、ゴホッ、ゴホ」
デイダラは再度粘土を食わし、移動手段として常用しているドラゴンを空へ羽ばたかせた。
(タイミングが良すぎるぜ……トビのヤロー今までスパイしてやがったな、うん……。)
脳内ではあのお調子者なトビが浮かぶ。その様子からはスパイなどという巧妙な役など担えそうにないが、眼前の男が口にした名前は確かにトビであったから、そういう事なのだろう。
「逃がさないよ!」
「ックソ!」
地を這う数多の白蛇がデイダラの足を絡めとった。なんとか振り払いながら傍を滑空したドラゴンの足を掴む。
(鎖羅が危ねぇ、早く向かわねぇと…!)
直ぐに向かおうと雨隠れの方角を見やった瞬 間、デイダラは背中に熱風を感じた。
振り向いた時には既に遅く、灼熱の炎に焼かれたデイダラの手はドラゴンの足から離れカブトの足元へ真っ逆さまに落ちた。
「あぁ危ない……あのドラゴンが爆発しなくて良かったよ。」
うつ伏せになって呻いているデイダラの金髪は黒く焼け焦げ、背中には重度の火傷を負って赤くてらてらと真皮が露出していた。
眼球が黒ずんだイタチがくっつけた人差し指と親指を離し、手を下げた。
「ッ、ァ、アァ……」
「流石うちはの豪火球の術は凄まじいね…」
もはや放っておいても死ぬだろう。しかし、念には念を押しておかねば、とカブトは印を結び、身を翻した。