第13章 夕立
トビは一歩下がると、印を結んだ。
最後に手のひらを合わせると、鎖羅の心臓は大きく高鳴った。
そして、鼓動が段々と遅くなっていく。
息が苦しい。身体の力が抜ける。どんな術をかけられたのかも分からないまま、胸を抑えながらトビへ縋るように手を伸ばした。
「邯鄲の夢、甦……禁術指定にしては単純でしたね」
「……え」
「印結ぶでしょ?発動のとき。血を少しでも引いている人なら誰でも発動できるし、解術も出来ちゃうんスね〜!」
解、術……?
──────────
「ッは、ぁぐアァッ……!!」
「だ、旦那?!」
急に胸を抑えて倒れたサソリにデイダラは駆け寄る。
「…イタチさん?イタチさん?!」
「ど、どうなってんだあー?!」
飛段が鎌を肩にかけながら叫ぶ。
アジトの共同部屋には全員揃っていた。
しかし、皆が突然倒れたイタチとサソリに戸惑う。
サソリの身体がみるみるうちに陶器の様に滑らかになり、柔らかさを失う。そして、体温さえも失い、目を見開いたまま絶命した。
デイダラはこの状態に見覚えがあった。
あの時、旦那が一度死んだ時。
部品を寄せ集めた状態と全く同じだ。
「…駄目だ、既に瞳力も無くなっている」
角都がイタチの瞼を下ろした。
イタチも同様、まるでサスケと戦った後の様に身体中の損傷が激しい。先程までのカブト戦で擦り傷さえも無かったのに、だ。
「トビが上手くやってくれたみたいだね。…さて、君達の体をこれ以上悪い状態にはしたくないんだ」
「…トビ?テメェいまトビっつったな?!」
デイダラがこめかみに青筋を浮かせながら激昴する。きっと小南へ任務の報告へ向かったトビは、間違いなく鎖羅と鉢合わせているはずだ。そうとなれば鎖羅が危ない。