第12章 十二朝
睡眠時間が足りていないのか、起床後少し時間が経過しても鎖羅の眠気は覚めないままだった。加えてなんだか重く感じる体は、今から雨隠れへ行くほどの気力はないと思ってしまうほどだ。
「センパイだいぶ辛そうッスね」
「何時間……でしたっけ」
「え〜っと、4時間くらい?」
それほどの睡眠なら慣れていない訳では無い。だが、足取りも覚束ず、受け答えもハッキリしない状態に痺れを切らしたか、トビは鎖羅の懐から書簡を抜き取った。
「あ……ッ」
「小南さんへの報告は僕が行きますんで、センパイは先帰ってて?」
「で、でも……」
「任せてくださいよ!ほらほらこんなに元気有り余ってるんスよ僕!」
ぴょんぴょん飛び跳ねてみせたり、鎖羅の周りをちょこまかと動き回る様子は確かに元気が有り余っているようだ。
鎖羅は今回は甘えてしまおう、とトビに向き直る。
「あ、その気になってくれました?」
「すみません、お願いしますね」
仮面の奥での表情は計り知れない。
だが、鎖羅にはこの少しの沈黙は、彼はきっと満足気に微笑んでいるのだろうと確信できるのだ。
「それじゃあ、気をつけて」
「オッス!」
一瞬で走り去っていくトビの背中が見えなくなったころ、鎖羅はアジトへと歩き出した。