第12章 十二朝
「そういえば僕、久しぶりに夢を見たんですよ」
「………どんな?」
「さあ……どんなんだったんでしょう」
鎖羅はトビの曖昧な返事にくすくすと笑う。
「夢の内容さえも、ひみつ、……なんですか?」
「そっちの方がボクに興味、出るでしょう?」
「もう、………こんなにも、お互い全てを知り合っているのに?」
「センパイも口が、達者なんだから」
トビは月光に青く染められながらも、頬だけは紅潮した鎖羅の首元にすがりついた。
そのまま手首を布団に沈ませる。ふう、と大きく胸が下がったのを感じた。
「トビさんに言われたくないです」
「アハハ!おっかしいなぁ、鎖羅センパイの前じゃあ抑えてる方なんスけど……」
「デイダラさんが、よく愚痴ってましたよ、あのバカトビはいくら注意しても口数が減らねえ!……ッ…て」
「あぁ……ハハ、すいませ、つい」
トビは少しだけ腰を引いて鎖羅から離れる。
「今は二人だけでしょ?センパイ」
「嫉妬、してるんですか?」
いたずらっぽく笑う鎖羅の目はやがて熱を帯び蕩けていった。体温のせいですぐにでも溶解してしまいそうな鎖羅の身体を取りこぼさないように、トビは更に強く抱きしめた。
朝と夜の境目がぼやける頃、二人は甘美な熱にうかされ気を遣り、そのまま静かに眠りについた。
先の不安など知らない。今はただ、泡沫夢幻の幸福に溺れていたかった。