第12章 十二朝
そして、互いに顔を合わせると合図するでもなく身体を重ねた。トビは鎖羅に全体重をかけ、取り込んでしまうほどに強く抱き込む。
畳の目がちょうど身体を滑らせる。
鎖羅は背中を僅かに丸め、トビから逃げないようにしがみついた。
そして、トビの首元の向こうに見える天井の木目に焦点を合わせる。
なんと幸せなことなんだろう。
私を包む男の体 全躯に感じる重み 耳元を擽る仮面の凹凸。
この全てが私の世界だ。
初めて触れる恋慕がこんなにも素晴らしいものだったなんて。
鎖羅は目を閉じる。
思春期に差し掛かった心はいとも容易く絆されていく。
このまま溶け合ってしまいたい……