第12章 十二朝
パタパタと音が聞こえる。
フードを外して顔を上げれば、足に小さい包みを付けた鳥が肩に乗った。
包みから手紙を取りだすと、鳥は飛び立っていく。
「……!!」
鎖羅の顔が晴れる。
手紙はトビからだった。同じように長期任務へと向かっていた彼はそれを終えて、今からアジトから数十キロ程の宿屋で部屋を借るようだ。
もうあの日から2ヶ月近くも顔を合わせていない。早く帰りたい。歓喜に包まれる身体を打ち出すように全速力で記された宿屋へと向かった。
月が空に昇った頃、休みなく走った鎖羅はぜいぜいと息を切らして宿屋の受付に部屋番号を伝える。
案内された部屋の扉を開けるなり、鎖羅は風呂の準備をしていたトビに抱きついた。
「わッちょッ!僕まだお風呂入ってないんで臭いッスよ!」
「えへ……トビさんのにおい……」
かなりの力で身体を抱きしめてぐりぐりと頭を押し付ける鎖羅をトビは抱き返す。
やがて名残惜しそうに離れた鎖羅は乱れた髪を整えて白い外套を衣紋掛けにかける。
「久しぶりですね!そっちの任務どうでした?暑かったですか?」
鉄の国周辺であった鎖羅とは違い、トビは風の国周辺が目的地だった。
「バカみたいに暑かったッスよ!ほらボクって身なりがこんなんでしょ?もう既に暑そうな格好してるのに、小南さんもそこら辺もうちょっと考えてくれれば良かったって思うッスよね?!」
「夏用とはいえ素材が薄くても、外套が暑いのに変わりありませんもんね」
畳に座ってブーブーと文句を垂れているトビの横に鎖羅は擦り寄る。ここに来るまでに汗をかいたとはいえ、ずっと寒い地域に居たので体はまだ冷えていた。