第11章 十一朝
鎖羅は鼓動を速めながら、トビに問いかける。答えてくれるかは分からない。ただ、もし思い通りの答えが得られれば、それは確信に繋がる、そう信じていた。
「どこに行ってたんですか?昨日の夜」
あたかも自然に、悟られないように。
「…センパイが、本が〜本が〜って呻きながら帰ってくるもんだから、アジトに無い本を探し回って買ってきたんス」
懐から出した包みを解くと、三冊の本が扇状に広がる。鎖羅はそれを手に取り、文机に向かった。
「………トビさん」
「興味あるモノばっかでしょう?ね?ね?」
「バカにしてるんですか!!」
二冊の医療書の中に、生物学…言ってしまえば生命の誕生の過程、さらに言えば大人向けの猥書が紛れ込んでいる。装丁は極めてシンプル。だが内容が宜しくない。
「も、もう!こんッ、こんな…!」
「ここの書庫にはこんな本ありませんもんねェ〜?まあ鎖羅センパイも年頃ですし…」
パッ、と左手首を取り上げられる。サソリさんに巻き直されたらしい包帯がしゅるしゅると音を立ててほどかれていった。
「…興味、ありますよね」
背中にトビさんの胸板を感じる。肩に顎を乗せ、いやらしく囁かれた。急に変わった声色に一瞬眩むが、トビさんの指が手のひらの傷口を無理やり開く痛みに目を見張り、歯を食いしばった。