第11章 十一朝
ぼうっとした明るさが夜を濡らしていく。
鳥の声が朝の始まりを告げた。
アジト内は暗さもあるが、早朝の白さも含み始めている。
青色の空気の中、トビは障子に手をかけた。
布団の中で少女は眠っている。
傍へ静かに胡座をかき、そっと厚い掛布団をめくった。
「……………」
安らかな寝顔だ。
なんだか顔色が悪く見える。
目尻へかかった髪を指先で軽く退けてやる。
こめかみの生え際を撫でられるのが気持ちいいのか、更に顔は柔らかく綻んだ。
「………ッ」
「おはようございます」
鎖羅は陽の光に目を細めて2、3回身体を捩らせる。そしてトビの面を確認すると、表情を強ばらせた。
「トビ、さん」
障子から射す暖かい朝日が逆光となり、トビさんは優しい雰囲気に包まれていた。髪を撫でる手袋は冷えきっている。こんな朝方に用があるのなんて珍しい。
「どうしたんですか?」
「体調、心配だったんス」
「あっ……昨日はありがとうございました…。私、ちょっと忘れちゃってて…」
鎖羅は髪を整えながら砕けた笑いを浮かべると、壁にかけた外套を引いて腕を通す。
「もう大丈夫なんスか?」
「えっと…サソリさんから薬打ってもらって良くはなってるんですが、一応小南さんから休暇を頂いて…」
「休暇?じゃあボクも暇になっちゃうんスねー」
トビは思い切り伸びをして、布団の横へ倒れた。冷えた手袋と着たままの外套からして、どうやら昨日の夜は外出していたようだ。