第11章 十一朝
「そ、うだ、私、サソリさんなら何とか出来ると思って」
身体の震えは治っている。キセイ様も消え、どっと疲れているからか眠いような気がする。
「運が良かったな。恐らくソイツは俺が昔使用していた、施術前に楽に逝かせる麻酔薬だ。本が本がと呻いてやがったがどこで吸ったんだ?」
「私の里の……蔵書室です。小さい頃読んでた本を閉じたら、本の内容がまるで現実みたいに広がってて……」
「本……か。ルートはまだ調べる必要がありそうだが本のページに薬品が染み込ませてあったってのが可能性として高そうだ」
鎖羅はそれを聞いても、どこか腑に落ちなかった。ピンポイントであの本に仕込まれていたなんて、誰も出来るはずがないからだ。あの本は父と自分だけの思い出の物語。もし、里の人間が逃げ果せて生き残っていたとしても、そんなこと知っているわけが無い。
曇った表情のままの鎖羅を部屋から送り出した後、サソリは薬品棚を整理した。
いくらリストを確認しても抜けはない。ましてや元々は自分で調合した薬なので出回ってるはずもないのだ。
「………」
サソリの脳内には昔の部下達の顔が浮かんでは消えている。その中で一人、心当たりのある奴がいた。機知に富み、忠誠心があり、腹の中を悟らせないような男。
大蛇丸が暁を脱退してから音信不通になっている。探す暇もないし、そもそも興味も薄かったサソリは作業を再開した。