第11章 十一朝
小南さんは白い折り紙を一枚手に取り、細い指でテキパキと折っていく。ぴっちりとした折り目が重なり、美しい一羽の鳥が完成した。
「これはなんて言う名前の鳥ですか?」
「ツルよ」
首をもたげた部位をつまんで床に置くと、こてんと倒れる。
「教えてあげるわ」
鎖羅は恐る恐る紙を取り、小南の言う通りに折り進めていく。
震える指は、思うように折り目をつけてくれない。
「あッ……!」
手の中で拙く生み出されようとしていたツルはぽろりと手から滑り落ち、川へと落ちていった。
呆然と自分の指を見つめる鎖羅の手を、小南はそっと包んだ。
ひやりとした感触に鎖羅は目を見張る。
「大丈夫よ、ゆっくり折りましょう」
もう一枚鎖羅に手渡し、今度はもっと丁寧に、ゆっくりと教える。
段々と落ち着いてきたのか、ツルが出来上がる頃には折り目はきっちりとつけられるようになっていた。
生み出されたツルは、小南のよりも不格好だ。
だが、小南が手をかざすと、歪な翼を羽ばたかせる。
「すごい…」
ひゅう、と指先を操った。小南のツルと、鎖羅のツルが戯れるようにして飛んでいる。
鎖羅はその様子を楽しそうに眺めていた。紙のツルが飛んでいるなんて初めてで、出来なんて気にならないくらい力強く羽ばたいている。
小南は無邪気さを覗かせる鎖羅の横髪をそっと撫でた。
指を通し、こめかみの上あたりで手を丸めると、どこからか現れた白の小さい紙が円を描く。
鎖羅の目元にかかった髪を、耳にかけるようにまとめる。すると、紙でできた蝶が羽をおろした。