第11章 十一朝
「ああ」
そう耳元で囁いた声は確かにデイダラさんのものであった。
「原罪の子よ」
サソリさんは言う。
「卑しき夢の住人よ」
イタチさんは低く呟いた。
「太陽を奪った」
リーダーの声が嫌に耳に響く。
はた、と気づく。
目を開けているのか分からないほど暗い空間、感覚を頼りに頭を下げれば、無数にすがりついていた腕がゆっくりと身体の中へすり抜けていく様子が目に入った。
「い、いや、いやあああっっ!!!!」
頬へ指が浸かっていく。
「恐れるな」
「コレモ全テ夜明ケノタメ」
ゼツさんの声は両耳互い違いに。
「悔いるがいい」
「見初められた喜びを」
小南さんと鬼鮫さんの声が止んだ瞬間、数多の腕は腹を突き破って蠢いた。
「ひゥッ……!!」
再び鎖羅は多幸感に包まれる。
蠢いた腕は、無数の指をちらちらと震わせて顔に伸びてきた。
恐怖はない。このまま溶け合ってしまうのが、いちばん良い未来だと、目を閉じる。
「信じるのは俺だけで良い」
渦巻いた橙の中から三つ巴を踊らせる深紅の瞳が見える。
低い声は聞いたこともないが、自然と声の主の名を口にしていた。
「トビさん……!!!」