第11章 十一朝
大樹の実が落ち、月が初めて空に浮かんだころ
かみさまは生まれました。
ぽうぽうと光り輝きながら、太陽をケーキにして食べるのがとっても大好きなかみさまでした。
ある日、かみさまは太陽のケーキを食べ尽くしてしまったため、世界は闇に包まれました。
すると、人々は朝を忘れて永遠に眠り続けてしまったのです。
ですが、ひとりの男だけは眠ることが出来きませんでした。
どこを見渡しても、気持ちよさそうに眠っている人ばかりで、男はいつだって孤独を感じていました。
寂しさがはち切れた頃、男は決めました。
みんなを起こすために、かみさまにまた太陽を作ってもらおうと。
そうと決まれば、旅の準備です。
大きなリュックに荷物を詰め、歩きだしました。時に雨に打たれ、時に干からびながらも、何日も何日も歩き続けました。男は疲れを感じません。だって、眠って体を休めることを知りませんから。
そうして辿り着いたのは、かみさまのねぐら。
男は荷物を下ろし、叫びました。
「神よ、目を覚ましておくれ」
「人の子、こんな夜更けにどうしたのだ」
「あなたが太陽を消してしまってから、世界は眠りについてしまいました。そうすると、わたしはひとりぼっちなのです。」
男は手を組んで、かみさまへ祈りを捧げます。
「どうか、どうかまた太陽を作り出してはいただけませんか。」
「うーん、そうだな、もうお腹が空いてきた頃だ。なら、人の子よ!眠ると良い!そうすれば、また世界は光に包まれよう。」
男はたいそう困りました。眠れないのにどうやって眠れというのでしょうか。
ですが、太陽をまた作ってもらうには何がなんでも寝なければいけません。しかたなく男は眠りにつきました。
そこから何十年、何百年、何千年、何万年、気が遠くなりそうなほど、男は瞼の裏を見つめ続けました。するとどうでしょう!かみさまが一億回のあくびをしたころ、光降り注ぐ世界が目の前にひろがったのです!
かみさまは男の目の前にごうごうと光り輝く太陽をひょいとつまみ上げると、月の裏側に浮かばせました。目を刺すような光に人々は起き上がり、ついに世界は目を覚ましたのです。
しかし、男は目を覚ますことはありませんでした。彼が見続ける世界は、やがて夢と名付けられ、人々は彼が寂しくらないよう、寝る度に夢へと遊びに行くようになりました。