第11章 十一朝
「一番刷られてた本なのであってもおかしくないんですが、家庭にあったのは全部燃えてるはずですし……蔵書室から持ち出したか里に入ったか………」
トビは適当にページを捲っていくと、しおりが挟まれた箇所でその手は止まった。びっちりと現代語でメモが書き込まれている。その章の見出しの文字を訳していくと、“禁術”と導き出せた。
メモの内容は走り書きで所々読みにくい。だが、足の裏で小気味よい音を立てて割れた白い破片は、ある一人の男の存在を示唆していた。
──復活を遂げたか、或いは。
トビはメモが書き込まれたページと、禁術について記されているページを一気に破りとり、畳んで懐にしまいこんだ。
「じゃ、鎖羅センパイ。帰りましょ」
「え?まだなにも見つかってないですよ?」
「薬品の作用を本でちょっと調べたら免疫活性化とか抗酸化作用とか出てきたんで、大方自然治癒力を高めたかった老いぼれの実験とかッスよ。」
トビは血がこびりついた点滴の針を取り出したビンに入れた。そして踵を返し、来た道を戻る。鎖羅は邯鄲の書をリュックに戻し、トビの後を追いかける。