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邯鄲の夢【NARUTO】

第11章 十一朝



「大丈夫ッスか」

トビは真っ直ぐに机の上の物に手を伸ばすと、液体を注いだ後に何かを擦った。すると、小さな火が鎖羅の手元を照らす。アルコールは蒸発しきっているが、油はまだ残っていたようだ。

「ありがとうございます」

鎖羅は油に差し替えられたランプを手に取って、手当たり次第に本のホコリを払っていく。生憎医療忍術には明るくないのでどのような実験が行われていたかは分からなかったが、ひとつ見覚えのある文字を見つけた。

「……これ、私の里の歴史書だ」

「え?センパイの故郷ってことッスか?」

トビは鎖羅が撫でた表紙の文字を見て目を細めた。何と書いてあるのかが分からない。瞳術の類が必要なのかと思ったが、鎖羅にはそのような血継限界は無い。

「霞ノ一族……懐かしいなあ。この本は里の家庭に一冊は必ずあったんですよ。親がこれを使って口承で子供に歴史とか教えるんです。あっ、霞って言うのは、当主が一族に対して使える千里眼的な術の名前で─────」

「あ、あの、熱弁してるとこ悪いんスけど、僕これ一文字も読めないッス。」

パラパラとページをめくって鎖羅に見せられたが、全く持って書かれている内容が理解出来ない。現代で使われている文字とはまるきり違った記号のようなものが羅列されているようにしか見えなかった。

「あっ……!ご、ごめんなさい、里の中ではこの文字が主流だったんです。その中でも特に勤勉な人が公用語の読み書きが出来て……当主は勉強せざるを得なかったんですけどね」

鎖羅はリュックの中からたまに何かを書き留めている本を取り出した。最初のページには表に並べられた同じ記号が母音と子音で振り分けられている。

「へー……何と言うか、閉鎖的だったんスねぇ」

「ええまあ……永世中立里だったので」

トビは表を片手に歴史書を読み解いていった。掴みの章こそ難解でアカデミーで習うような忍の歴史とはかけ離れた記述であったが、最後にはキセイという一人の現人神が今の一族を築いたと結論づけられていた。


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