第11章 十一朝
「あれ……無い」
「お……おお」
鎖羅はうろうろと歩き回りながら飛段の座るソファのクッションを持ち上げた。身体を軽く持ち上げられた飛段がこてんと横に倒れたのに気づくと、鎖羅は慌てて元の位置に戻す。
「あああごめんなさい」
「いやいいけど……何探してんだ?」
「えっと、巻物を」
「巻物?あー……そんなら、ゼツに聞いてみろよ。本まとめたのアイツだし」
「私物なんです。いつも持ち歩いてるんですが………」
「セーンパイ!早くしないと終わるの遅くなっちゃいますよー!」
「すみません今行きますー!………おかしいなぁ」
向かう途中にもあちらこちらをひっくり返しながら歩いていく鎖羅の背中を飛段は見届ける。随分平和になったな、と思う飛段の気持ちを代弁するかのように、息をかけたネックレスは曇った。
「すみません待たせちゃって」
「捜し物ッスか?」
「はい、禁術の巻物が無くって……」
木の太い幹を選んで飛び越えながらも、鎖羅はリュックのなかをまさぐっていた。時折チャクラコントロールをミスって落ちそうになるのをトビは支える。
「センパイ、一応命狙われるシロモノ持ってんスから、無くすなんて有り得ないッスよ」
「そ、そうですよねぇ……」
「帰ったらもう一度部屋探してみましょ、今はとりあえず任務に集中ってことで」
「!……はい」
リュックを背負い直し、一気に木の最上部へ飛び上がる。火の国と土の国のちょうど間に位置する滝隠れの里、今日はその近郊の森にある実験施設の調査を依頼された。白く所々にヒビが入ったドームはさほど大きくなく、地下に空間が広がっているのだと推測される。
鎖羅とトビはドームの入口付近に飛び降りる。見張りは居らず、点々と血溜まりが出来ていた。