第11章 十一朝
「う、うわぁああぁ!!!」
配管がむき出しになった廊下に男の叫び声が響く。三人の忍は大汗を流し時々後ろを振り返りながら溺れるように走っている。額当てには滝隠れのマークが刻まれていた。
「クク………」
「や、やめろ、やめろォあぁあ!!」
風を切る勢いで襲いかかり、男の1人を飲み込んだ白い大蛇がムチのように舌をしならせる。そして、すっかり腰を抜かした残りの2人に向かって牙を向いた。
悲痛な叫び声の残滓を、深々とローブのフードを被った男が全身に浴びた。スルスルと伸びた袖の中に戻った白い大蛇は白銀の鱗に鮮血を透かしていた。
「力が馴染む……いい調子だ、悪くない」
影を落とすフードの中から銀縁のメガネが光る。その奥では、まるでヘビのように見開かれた瞳が満足気に歪んだ。
「そろそろ行動を起こすとするか……。」
一本の血の跡が外へと続いている。
男はいやらしい笑い声を静かに上げ、地下から出ていった。