第11章 十一朝
「……ッ!」
障子から月光が差し込んでいる。
肌寒さを感じ傍らに畳まれていた掛け布団を身体に巻いて静かに障子を開けた。
月の高さからして、夜の11時ほど。
記憶をたどっていけば、どうやらあの時気を失ってしまったみたいだ。
掛け布団を脱ぎ、ひた、と冷たい廊下に足を下ろす。
部屋内は多少の寒さを感じるほどであったのに、外は夜風が体を震わせた。
喉の乾きを感じ、アジト内部へ続く階段へ向かう。
「……ぁ…イタチさん」
「鎖羅。どうしたんだこんな夜更けに」
真一文字に傷が刻まれていた額当ては無く、しっとりとした黒髪がイタチの頬を擽っていた。数回咳払いし、鎖羅は口を開く。
「ぃや、……変な時間に寝てしまって、今さっき起きてきたんです」
「そうか。今夜は月も出ている、このまま起きているのも良いと思うぞ」
以前までは到底見られなかったであろう、穏やかに目を細めるイタチの表情はどこか毒気が抜けていた。
沈黙が流れる。気まずさに鎖羅はやり場のない手を二の腕に当て、暖を取るように数回さする。
「随分と寒そうな格好をしているんだな」
「!」
バサッと外套が翻った。髪が揺れ、身体はまだ温もりが残っている布に包まれる。アジトの洗濯室の香りがした。洗ってからさほど日は経っていないようだ。
鎖羅はイタチの外套の若干だぶついた袖に腕を通し、スナップボタンを止める。
「暫くそれを着ていろ。冷えは万病の元だ。」
「す、すみません。ありがとうございます……新しいのすぐ貰って返しますね」
「ああ」
目を伏せてイタチは歩き出す。外套に移ったイタチの温もりをかき集めるように、鎖羅は身体に腕を回した。