第11章 十一朝
「あんな時代遅れの里にいちゃあ感覚も鈍るってもんよ……」
デイダラは腰のポーチに手を入れようとしたが、すんでのところで手を引いた。
「………イタチ」
「トビ……それにデイダラか」
「お出かけですか?昼過ぎなのに?」
「野暮用だ。」
目を伏せ、横を静かに通り過ぎるイタチの背中をデイダラは鋭い目付きで追う。なにやら確執がありそうな二人だが、そんなものトビにとっては関係の無い事だった。
「変にスカしやがって」
「まあまあ、せっかく戦いでピリピリする事も無くなったんだし穏やかに行きましょうよ」
「それは違ぇな、トビ。こんな平和な日常の中でも常に殺気を心の内に飼い慣らしとくのがクールってもんだ。うん」
ビュッと粘土が風を切り、デイダラが印を結ぶと大きなドラゴンが滑空した。風の流れを逃さないように手すりに足をかけて素早く飛び乗ると、旋回してトビを見下ろす。
「一週間もしたら全員帰ってくる、また任務に追われる生活だ……トビ、鎖羅に言っとけ!身体鈍らすなよってな!うん!」
「うわわっ!」
ドラゴンが羽ばたいてった風圧に耐えきれずトビは柱に頭をぶつける。後頭部をさすりながら見上げれば、既にデイダラの背中は小さくなっていた。
「いてて……も〜!デイダラセンパイの粘土バカー!」
ふう、と溜め息をつき、トビは自室へと歩いていく。影っているお陰で、嫌に冷たい漆を塗られた廊下が爪先を冷していった。