第11章 十一朝
「あれ、早かったんスね」
「トビさん」
トビは大広間に一人ぼうっと立っていた。他のメンバーはそれぞれ故郷の里へ戻り忍登録していると言いながら、自室へ戻る鎖羅に着いていく。
パタン、と襖を閉めたのはトビ。
まんまと二人きりに誘導された鎖羅は警戒しがちにリュックを降ろす。
「えと……何か」
降ろしたリュックの肩の紐から手を離す暇もなく、鎖羅はトビに強く抱き締められた。トビの規則的な鼓動が鎖羅の早まる脈と相対的に鳴り響いている。
スルリと鎖羅の髪を布に纏われた手が撫でた。まるで無邪気なトビらしさを表すような鼻腔をくすぐる森と川の瑞々しい匂いは、抱き締められている男らしい体と相まって鎖羅にますます意識させている。
「…良いッスね。あのマントが無いのでちゃんとセンパイを感じれます」
「……ッ、待っ、」
鎖羅の耳をトビの指先が這う。親指で凹凸を摩り、耳の裏を人差し指が優しく撫でる。もどかしい刺激に目を瞑れば、首筋に手のひらが下りた。
うなじに指先が伸びた瞬間、するすると脱力した鎖羅はトビの手を抜けてへたりと畳に尻をついた。頬が次第に熱を帯びていくのを感じる。トビはクスクスと笑いながらへたりこんだ鎖羅の前にしゃがんだ。
「参ったなー、そんなにボクの手が気持ちよかったんです?」
「ち、違います……ッ!」
「どうしてそんなに真っ赤っかになっちゃうんスか?前はそうでもなかった、ってか嫌がってたのに」
力なく落ちた鎖羅の手にトビは指を絡ませた。じっとりと手汗で湿っているのがとてもウブで可愛らしく感じる。