第11章 十一朝
「これをアンタに返すよ。だけどこの前話していた通り、術者の寿命を対価とする大変危険な術だ。使い所の見極めを間違えるなよ」
「はい、肝に銘じておきます」
巻物を大事そうに受け取ってリュックへ押し込む。
「治療の返事はいつでも良い。やらないならやらないで返事はしなくても構わないしね。またなにか不安な事があったら相談するんだよ」
ポン、と綱手の手が鎖羅の頭を撫でる。桃の紅を引いた唇はとても美しく潤っていた。
「はい!お忙しいところありがとうございました!」
書庫を出て執務室を後にする。
一歩、足を出す。しかし、数秒考え込んだ後、鎖羅はぎこちなく崖上へ飛び上がった。
ビンゴブックから除名され、罪も晴れ、里の救出に助力したとはいえやはり木の葉の里の住民達の目は厳しい者も多かった。死罪にしなかったことを糾弾する派閥も少なくは無いらしい。
こうやって命を賭して守った結果として、多少ではあるが嫌悪されているとしても、私はあの判断に後悔はしていない。もう二度と守ることの出来ない故郷を木の葉に重ね、そう思った。