第11章 十一朝
「カウンセリングの内容と記憶喪失中のお前の状態から診ると、やはり情動脱力発作の線で間違いないだろう。主に鎖羅達の年で起こる睡眠障害だ。」
「綱手さん、その事なのですが」
鎖羅は持参したリュックから邯鄲の夢・第九十八篇を取り出す。長らく暗号化して読めなかった箇所が、ペインの死亡後数ページ分ではあるが読めるようになっていた。
内容は母が私と同じ歳の頃、激しい昼頃の眠気と笑った後に身体がどっと疲れることなどが悩みがちに記されていた。
「うーん……母も同じ症状だったって事か。まだ結果は後になるのだが遺伝的なものも考えた方が良いかい?」
「でも、母は数年前には既にそんな様子はありませんでした。歳を重ねるごとに消えていくんでしょうか?」
「そうだと良いけどねェ…。まあ、治療は出来るよ。だけどもしかしたらその病気こそがお前の能力たらしめるものかもしれない。判断は任せるさ」
綱手は本を閉じ、鎖羅に渡す。情動脱力発作について詳しく書かれた医療書だ。
「さて、次だ。」
抱える位の金庫を机の上に取り出し、扉を開ける。中には見慣れた巻物が鎮座していた。