第9章 九夜
「さあ……幕引きだ」
「弥彦……」
ゆっくりと体を起こしたペインを小南は支える。これから何をするのか皆目見当もつかないナルトと暁たちは、その様子をただじっと見つめていた。
「デイダラ、サソリ、角都、飛段、鬼鮫、イタチ、トビ、ゼツ、小南、鎖羅……お前達に暁を任せたぞ。ナルトは……平和への架け橋になる男だ。そして俺たちは、その柱として支え続ける……」
ペインは両の手のひらを合わせ、印を結ぶと、目を見開いた。すると藤色の輪廻眼の輝きは増し、身体から可視化した生命エネルギーが溢れだす。
「外道・輪廻天生の術!!」
「ッ………う」
「ヒナタ………ヒナタ!!」
「ヒナタ様が目を覚ましたぞ!!」
「…………オ、オレは」
「カカシ先生!!綱手様!カカシ先生が!!」
「お父さん!お父さん!!!」
「あぁ………あなた!!奇跡よ!奇跡だわ!」
「……あ……?」
「………飛段、なんだそのツラは」
「………ッッの、馬鹿野郎!!」
「な、なに……?チャクラがどんどん、里の色んな場所に………」
「これが輪廻眼による転生術……初めて見たな」
「今頃飛段、治療所で泣きわめいてるかもな……うん」
全てのチャクラが飛びきったあと、ペインは力なく腕を下ろした。そして小南はゆっくりと寝かせる。
安らかに目をつぶっている顔に、ナルトがハッと気づいたような素振りを見せた。
「!……なあ、もう、ペインは」
「ああ…死んでいる。」
ポタリと涙が落ちた。
小南が手をかざすと、ペインの遺体は紙に包まれていった。
「皆……弥彦の最後の言葉を、どうか忘れないで欲しい。私たちの宝物だった“暁”として………」
「…………」
暁は頷いた。
夜明けに新たな風が吹く。まだ終わりじゃない───これは第一歩だ。世界の狭間に囚われた彼らは解放され、始まりへと歩み出す。
「なんでだよ、一緒に戦ってくれたのは変わりないだろ?」
「いいや……俺達はまだ犯罪者だからな。必ず歓迎されるとは限らねェ。」
激闘したナルトは暁に背を向けると、疲弊した体を駆けつけたカカシに背負われ、戦地から歩み出した。クレーターの向こうでは里の全員がナルトを称え、雄叫びを上げ、迎えていた。