第9章 九夜
「ナルトが!ナルトがペインを倒したぞ!」
「!!」
治療所のテントが貼られている陣営へ駆け込んできた医療忍者は、酷く傷を負っているヒナタを寝かせた。その声に暁のメンバーは木の葉の忍に支えられながら、クレーターへと向かった。
戦場の真ん中ではペインが仰向けに倒れていた。そして傍らには小南が佇んでいる。
「小南さん……リーダー……」
「ああ………お前達か………」
ペインが薄く目を開いて暁の面々を見やり、僅かに笑った。
「傷だらけだな……」
「リーダーだって人の事言えねぇよ……うん」
「ハハ……」
息を吐き、疲れたように笑ったペインに鎖羅を除くメンバーたちは目を丸くする。無理もない。以前のペインなら口角をあげることも無く、ましてや声を上げて笑うペインなど見たことが無かったのだ。
どこか吹っ切れた様子のペインは、太陽に手のひらを透かし、話し始める。
「俺達の夢は…叶えることが出来なかったな…」
「心配すんな。その夢はオレがぜってー成し遂げる。もちろん痛みなんかじゃなく、オレなりの方法で平和を作ってやる!」
「……フッ、うずまきナルト……自来也先生が、お前のことを救世主だと言うのもよく分かる……」
小南はナルトの前に立ち、手を差し出した。
その手にはだんだんと紙が集まり、真っ白な薔薇の花束が完成する。
「紙分身ですまない…いま本体は自来也先生の元へ行っている。この様子も全て伝えているはずだ。……そして、これは私達からのはなむけだ。ナルト、長門が命を呈して守った夢を…弥彦が受け継いだ力を…お前に託そう。」
「………ああ!」
ナルトは花束を受け取り、大事そうに腕に抱いた。
「ありがとう……」
小南は微笑んだ。僅かに瞳が揺れ、一筋の涙が頬を流れる。