第9章 九夜
「お前に、俺の痛みが理解出来るものか……お前なんかに、俺の痛みを越えられるものか……」
ペインはユラリと不気味に揺れる。
向けられた輪廻眼は、今まで以上に闇を抱え、怒りをたたえていた。
ペインの身体は高く宙に上がる。手のひらを打ち合すと、鎖羅が立っている地面はボコボコと浮かび上がり、だんだんと亀裂に体が飲み込まれていく。
「ぅ、あぁッ!!」
「俺の痛みは………お前以上だァアァッッ!!!」
今度こそ身体は動かない。
もがいてももがいても、亀裂に飲み込まれていくだけ。
ペインの怒りの表情と拳を見上げ、鎖羅は全身に力を込めた。意識が飛びそうな脱力感に耐えながらもチャクラを練って豪水腕で脱出しようとしたその時─────
金色の光が駆け抜ける。
突如襲いかかった風圧に目を細めた。逆光に照らされた臙脂色のマントが翻ると、ペインは遠くに吹き飛ばされた。
「待たせて悪かったってばよ………うずまきナルト、参上!」
「君がナルトくんだったのね…!!」
かつて砂の里で一度見た姿とは若干異なり、炎が燃ゆるようなマントと大きな巻物、そして隈取りがされている目は、瞳孔がまるでカエルのように変化していた。
「全部イタチから聞いたぜ…!俺たちの里のために、戦ってくれてたんだってな!」
差し伸べられた手を引いて地中から這い出る。
太陽の煌きさえも己の力にしてしまうようなナルトの輝きは、まさに救世主であった。
鎖羅はナルトの背中に、これまでにない感動を味わう。これが、救いだと。
「もう大丈夫、オレが来たからには……うおっ?!」
鎖羅は微笑みながら、グラリと倒れていく。驚いたナルトが支えようと腕を伸ばした瞬間、時空が歪んだ。
「…………」
「あーッ!お前ってばどこから!」
「……任せたッスよ、ナルトくん」
「!……………オウッ!」
ナルトは吸い込まれていく空間を見届け、起き上がったペインに向き直った。
かつての敵や、里の者、仲間たちが繋いだ命、思い。これらがナルトを強くする。そして、痛みになど決して負けることの無い、強い心を胸に──────