第9章 九夜
「確かに、今まで私はなにも守ってこれなかった……親も、民も、里も、仲間も、全てを!!
でも!!その痛みを胸に抱いて、忘れないで、もう二度と誰も失わないためにここに立っている!!」
動かなかった体は、次第に力を取り戻していく。それと同時に鎖羅は気持ちが高ぶるのを感じていった。視界の端には木の葉の里の民達が、傷つきながらも見守ってくれているのが見える。
「リーダー……いや、ペイン!!もう一度言います!!痛みで作られた平和なんて長続きしない!!だって、ヒトは痛みを乗り越えて成長して生きていくから!!痛みを与え続けていくなんて、そんなの死に続けるのと一緒だッッ!!」
「……愚かだ。生きているから憎しみを産む。生きているから悲しみを産む。忍は……ヒトは、まるで数珠繋ぎの様に痛みを連鎖しながら歴史を紡いできたのだ。」
「アナタは……ッ、何も分かっていない!全てを失い、痛みを経験した者が次世代にすべきことは決して痛みを教えることなんかじゃない!守ることだ!!それが平和だ!!!」
鎖羅は駆ける。ほぼチャクラは底をついているはずなのに、全速力で地面を蹴る。ぶつかり合った腕越しに互いの視線は交差する。決してそらさず、恐れず。
「俺は親友から痛みを受け取った。そして今ここにいる。この友から受け取った痛みが……俺を強くする…!」
ペインを中心に放たれた衝撃波は鎖羅を空中へと突き飛ばした。
宙で身を翻して着地する。鎖羅は武器をホルスターにしまうと、バックルに手をかけて腰から外した。
(もうチャクラは殆ど無い……辛うじて生命力を維持する分だけ残さなきゃ……!)
「思い出しましたよ……弥彦。私は小さい頃アナタの夢を見ている。正しく、アナタが痛みを感じた瞬間だ。」
「………その名は捨てた」
「邯鄲の夢、知は、夢の中の当事者となり、出来事を追体験する能力……。弥彦、アナタが友を失った痛みも、私は知っています。」
「だから…なんだと言うのだ…」
「!」