第9章 九夜
「……それは出来ねぇ」
二人の鼻先を湿った風が撫でる。
するとナルトはじっと見つめていたイタチの姿に、何か気付いたようにハッとした。
「お、お前……あの黒いマントはどうしたんだってばよ?」
「俺たち暁は……内部分裂を起こしている。」
「仲間割れってことか…?それと俺が里に帰ることになんの関係が」
「今、ペインが木の葉の里を襲撃している」
ナルトは目を見開いた。
その思考には、帰りを待っているサクラやカカシ、綱手、同期の仲間たちの顔が次々と浮かんでいた。
固く拳を握る。いまここでイタチに食ってかかっても仕方の無いことは分かっていた。既に外套を脱いだという事は、暁ではないのだ。
「でも、悔しいけど今の俺じゃペインを倒すことは出来ねぇ……あのエロ仙人も、ボロボロになって帰ってきた……半端なく強いんだろ?」
「そうだな。一刻も早く止めなければ、多くの命が失われる事は明確だ。」
「……ッ、じっちゃん仙人!もっと早く習得出来ねぇのかってばよ?!」
「だからさっきも言ったじゃろう!お前の中の狐がワシを拒んでおるから、本来通りの習得方法では叶わんのじゃ!」
「うーん、うーん、どうすればいいんだってばよ……!」
頭を抱えたナルトは、飛び立ったカラスを目にする。
(そうだ……いまイタチは影分身……!)
そして、印を結ぶと幾人ものナルトの影分身達が滝の道を埋めつくした。
「これならァ、経験値も倍になるから習得もソッコーで終わるってばよ!」
「あ、そうじゃそうじゃ、蝦蟇油を出すのを忘れとったわい。これ使えば更に効率が上がるでの」
「だーっ!そんな大事なモン、もっと早く渡して欲しかったってばよー!!」
イタチは焦りながらも、また修行に取り掛かったナルトを見て微笑んだ。
外にいる鬼鮫に木の葉の里の動向を見張らせて、もし緊急を要すれば直ぐに連絡するように伝えてある。
もっとも、この様子なら仙人モードの習得は直ぐに終わってしまうだろうが。