第9章 九夜
角都と鎖羅は着地する。
そして眼前にできた大きな水牢と炎を見据えた。
「地獄釜……って所だな」
水牢の中の水は炎にかけられて沸騰する。飛段は中でもがきながらも、同じように高熱に晒されているペインを睨んでいた。
身体の全てが焼けるような熱さに、ペインは身をよじるが飛段の術のせいで動けない。
「ッ……ぅ」
「効いてる…!」
「元は暗殺に適した飛段の術……こうやって賢く使うのが定石だ」
飛段の皮膚は次第に深刻な火傷を負い、全身が爛れていく。ペインの身体も同じように皮膚が溶け落ちていった。
「っぁあああっっちぃいいい!!!」
水牢が蒸発すると、飛段の身体はドサリと落ちた。二人は駆け寄って、鎖羅は飛段の身体の様子を見、角都は同じくうずくまっているペインを監視する。
「お前よぉー!!」
「熱い湯には慣れていると思っていたぞ」
「馬鹿か!!温浴の適温は40度程度だって知らねーのかよ!!いくら湯隠れでも100度の湯は沸かさねーよチクショウ!!」
「鎖羅、また水牢にぶち込んでおけ」
鎖羅は印を結び、小規模の水牢を五つ作り出して飛段の手足と胴を包んだ。
ひどい傷だ。これではもう戦うことすらままならないだろう。
「ひ、飛段さん、すぐに手当しないと…!」
「大丈夫ですか!!」
全身が真っ赤に染った飛段を前に狼狽えていると、白い滅菌服に身を包んだ忍達が飛段を取り囲んだ。ハッと顔を見上げると、クレーターで戦っている鎖羅達を、元の地面の高さから大勢の人達が取り囲んで見ていた。それぞれが傷を負っている。
「こ、こんなに……」
「加勢できなくて申し訳ない、この里の手練達は殆ど任務か重傷を負っている…!ナルトが来るまでは暁に任せようというのが火影様のご意向だ……」
飛段は既に気を失っていた。担架に担がれ、クレーターから出ていく。
一人の医療忍者は、鎖羅の肩を掴んで真っ直ぐ瞳を覗き込む。
「みんな、お前達暁に期待している……!頼んだぞ……!!」
そう言うと、飛び上がって担架を追いかけて行った。