第9章 九夜
飛段と角都に合流した鎖羅は、ペインがいるクレーター目指して走り抜けていた。しかし、ある地点に着いた時、鎖羅は足を止めた。異様なチャクラの雰囲気に冷や汗を流し、体を震わせる。
(こんなチャクラ……経験したことない………)
「……鎖羅、気をつけろ」
「角都さん、飛段さん……」
「こんなリーダー初めて見たぜェ……」
ペインの足元には何人もの木の葉の忍達が倒れている。忍具、巻物、あらゆる物さえも血を浴び、まさに地獄という名に相応しい。
だが、ペインだけは外套の何処にも血を付けずに一人立っていた。
「どうするんだよ角都」
「無闇矢鱈に突っ込んでも跳ね返されるだけだ……連携を取れ」
背中から這い出た黒い生物は、口から火遁のチャクラを漏らす。それを合図とするかのように、飛段は大きく跳躍しまるで弾丸のようにペインに向かっていった。
「水遁、水弾波!」
マスクをずらした角都の口から吹き出された水のカッターは、ペインに横一直線に向かっていく。だが、衝撃波によって攻撃の一部は跳ね返されてしまう。
「角都ゥ!」
「問題ない」
角都は跳ね返された水遁を飛び上がって避け、腕を伸ばし鎖羅を掴みあげる。
「ゲハハハハハァーー!!!」
飛段はペインの横をそのまま走り抜けると、くるりと身を翻した。その動きとともに、飛び散った血と、予め流しておいた横腹の傷から流れる血を利用して地面に紋様を描く。鎌の刃に付いた血を舐めとると、飛段の体はじわじわと黒く染っていった。
「ッ……」
「てめーはもうオレ様の術中の中だ……」
「鎖羅、水牢の術は出来るか」
「い、いえ……」
「今から言う印を結べ。飛段に向かってな」
「飛段さんに向かって?!」
「ああ。いくぞ」
角都は空中で黒い生物を蹴りあげ、更に上空へと飛び上がる。そして掴んでいた鎖羅を放り投げた。
鎖羅は教わった通り、印を結び飛段に向かって手を構える。
「水牢の術!!」
飛段の身体はたちまち水の塊に包まれた。息が詰まるのと同時に、ペインは眉を寄せた。
(!これでリーダーも窒息状態に…!)
「火遁!頭刻苦!」
生物の口からとても巨大な火球が吐き出される。それは飛段に向かってぶつかり、たちまち水牢を包んだ。